今日以上の事があるのなら。
興奮して書いてます。正確には先日の出来事を思い出しながら。更に付け加えるなら、思い出さずとも、忘れる事などあり得ないから。
私達の業界の中で、出来れば避けて通りたいと
思う修理があります。今回は純正色に設定され
ていながら、[高難度塗色]とまで呼ばれる厄介な塗装です。ん〜とうとう来たか…手始めの鈑金作業に目もくれず、一気に塗装作業にピントを合わします。頭の中で緻密なシュミレーションが行われると同時に、相方の誠の表情にも
緊急感が漂います。まだ触っても無いのに…。
専門的な事をダラダラと書き綴る気もありませんが、簡単に説明すると、コート数が多く、扱う塗料性能にもよりますが、最低でも10層〜12層ぐらいでしょうか?この色の為だけに専用塗色が必要となり、しかも超高額。事前説明せずにお客様にお代を請求しようものなら、確実に怒られるレベル。何故、私が頭を下げる必要があるのか?メーカーよ。こんな色を世に生み出すな。販売に関わる営業マンにも。ちゃんとお客様に説明して下さいよ。販売利益も大事だけど、美しさに隠れたリスク、デメリットも。
端折りに端折って、一気に塗装作業ですが、この塗色の最大の特徴。[カラークリヤー]
平たく説明すると、無色透明な水飴に食紅を混ぜると半透明な赤が出来ます。それをベースとなる色の上に塗り重ねて深みを出す行程。
別名[キャンディー塗装]
塗り重ね回数で深みも増し、しかもベース色は透けるので奥行きが有る塗装に仕上がるのです。派手さと上品さが両立する感じ⁇
左がベース。右が仕上がりのイメージ。
水飴の具合で右に変化します。信じれませんね。作業する側もいつも思います。
ベース段階ではパッとしません。
ちなみに塗り始めたのは2月7日(金)18時〜
有難い事に寒さが身に染みる気温でした。
気温に合わせて希釈してますが、水飴の粘度と作業者の能力も相まって、1回目の失敗…
納期の関係で嫌な時間帯と気温との戦いです。
何時間経過したでしょうか?膜厚と気温の関係で思う様に進まず、失敗の度に更に膜厚が増えていきます。ただでさえ乾かないものが、更に乾かないものになっていきます…
失敗の度に精神的にもダメージを負い、無言で手直し。2人で黙々と。その手直しでさえ、乾かない現実により、時間の経過を余儀なくされます。何時間経過したでしょうか…
心の状態を取り戻すべく、夕飯を2人で摂り、必死で立ち直ろうとします。塗装は体力よりも精神力。ハッキリ言います。自動車修理で鈑金塗装以外の事は簡単かと。何故なら、修理じゃ無いから。何処までいっても交換だから。掃除だから。物質、物体そのものを再生するのが鈑金塗装だから。私達以外にそれをする人が居ないから。言い切れます。
振出しに戻り、3回目の時にそれは起こりました。焦りに支配された相方が発狂。立ち直る事が不可能なのでは無いかと思う状態に。
僅かながらも、手直しを要する現実が目の前に。[心が折れる]音が聞こえた気がします。
でも、そんな時に思うのです。思い出すのです。私事ですが、1人の時、1人だった時。何年前だったかな?焦りと無力な自分が情け無くなって、悔しくて。作業中、夜中に1人で泣いた事を。でも今は1人では無く、2人です。
私が普段支えてもらっているからこそ、支えれるのです。冗談混じりで1人でも手直しが出来るのです。その間に立ち直った相方が横に居ます。表情も大丈夫。次こそはいけそうです。
気温計は5度を下回り、空調の関係で正確な温度は分かりません。確かなのは、恐ろしい程の疲労感と足先の感覚の無さ。底冷えによるものでした。時計の針は翌朝の4時。塗装完了を指す時間でした。
決して大袈裟では無く、闘い抜いた相方。
闘っている間に用意していました。
その名も[足湯♨️]
実は相方は現状、足が悪く、若干ながら足を引きずって歩いています。心優しい兄貴が何度か足を踏みに来てくれています。私も仕事終わりに踏んだり説教してます。痛いばっかり言わんと青竹踏まんかい!と。運動不足ですね。
20年この仕事をしています。開業して5年目です。色んな思いを経験しました。でも、これ程、今日程、過酷で感謝を感じる事があったでしょうか?この先もあるのかなぁ?私は相方の誠が大切です。大好きです。踏みに来てくれた兄貴も大好きです。だからこそ、労いたいんです。労わせてくれ!って思うんです。しかしながら、オイルのペール缶なんで、少〜しだけ油が浮いてます(笑)よく洗ったんですけどね。
失敗だらけでクオリティ低いです。
それでも最高な仕事でした。
今日も真摯に鈑金塗装と向き合います!
それでは、また。